龍神

龍神
筆者は、龍にまつわる伝説が古くから語り継がれる町に住んでいる。
ゆえに、龍は私にとってローカルヒーローといえるのだが、
例えば中国においての龍は常に皇帝の権力と強さの象徴であり、
西洋でも新約聖書には、七つの頭と十本の角を持つ竜が登場するなど、
決して土着的な存在ではない。
まさに世界で最も愛されている神獣が龍なのだ。
我が町の伝説によると、この土地には小さな龍が住んでいたのだが、
日照りが続き、田畑は干乾び、村人達は餓死をも覚悟する状況下、
その龍は身を捧げることと引き換えに、めぐみの雨を降らせたというのだ。
しかし私は思う。龍がそんなことで簡単に死んでしまうのだろうかと。
神の力を備えたその龍は、人のため、自然のため、
今でもどこかで万物を、
遠い空から見守ってくれているのではないだろうか。